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疾患について

依存症
(アルコール・薬物など)とは

~訪問看護が支える「やめる」ではなく
「立て直す」回復の道~

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1.依存症とは何か(誤解されやすい病気の正体)

依存症は、「意志が弱いから」「だらしないから」起こるものだと思われがちです。
しかし現在、依存症は脳の働き(報酬系)に変化が起き、やめたくてもやめられなくなる病気と考えられています。

本人も「もう二度としない」と何度も決意しているのに、あるきっかけで再び飲んでしまう、使ってしまう。

そこには、単純な“気持ちの問題”では説明しきれない仕組みがあります。 依存症の本質は、快感を求めることだけではありません。

頭を両手で抱え、苦しそうにうずくまっている人
不安や抑うつ、孤独、怒り、焦り トラウマや人間関係のしんどさ 眠れない、緊張が抜けない
不安や抑うつ、孤独、怒り、焦り トラウマや人間関係のしんどさ 眠れない、緊張が抜けない
不安や抑うつ、孤独、怒り、焦り トラウマや人間関係のしんどさ 眠れない、緊張が抜けない

「つらさ」を一時的に和らげるために、
飲酒や薬物が“役に立ってしまう”ところから始まります。

だからこそ回復には、「やめる」だけでなく、生活の立て直しやつらさに耐える方法の獲得、
そして支えてくれる人との関係の再構築が欠かせません。

訪問看護は、
”回復続ける土台づくり”
在宅一緒進められる支援です。

2.依存症のサインと種類(アルコール・薬物・その他)

依存症は、アルコールや薬物だけに限りません。
近年は「ギャンブル」「買い物」「ゲーム」「SNS」などでも、似た構造の依存が起きることが知られています。ここでは訪問看護でよく関わる、アルコール依存症と薬物依存症を中心に、見分けるサインを整理します。

依存症の代表的なサイン
  • 「やめよう」と思ってもやめられない、回数や量が増える
  • 使用のために生活が崩れる(遅刻・欠勤・家事放棄・金銭問題)
  • 隠す・嘘をつく・言い訳が増える(本人も罪悪感がある)
  • 使用しないと落ち着かない、イライラする、眠れない
  • 体調や人間関係よりも使用が優先になる
  • 「これで最後」と思っても再び繰り返してしまう
アルコール依存症よく見られること
  • 飲酒量が増える(耐性ができる)
  • 休肝日を作れない
  • 朝から飲む、隠れて飲む
  • 飲酒後の記憶が飛ぶ(ブラックアウト)
  • 飲酒による事故・転倒・喧嘩・暴言が増える
  • 肝機能障害、胃腸障害、不眠、抑うつが強くなる
テーブルに並んでいる複数のお酒の缶
薬物依存症でよく見られること
  • 覚醒剤、大麻、コカイン等の違法薬物
  • 市販薬(咳止め・鎮痛薬など)の大量摂取
  • 睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系等)の乱用
  • 「やめると不安・不眠が増す」ため増量しやすい
  • 幻覚・被害妄想・攻撃性・強い焦燥が出ることがある
手のひらにある錠剤

薬物の場合、「一度使ったら人生が終わり」という誤解もありますが、実際は早期発見と適切な支援で回復可能です。大切なのは、責めることではなく「安全確保」と「治療につなぐ」ことです。

3.体と心に起きていること(脳・症状・合併症)

依存症では、脳の中で「報酬」に関わる仕組みが変化し、快感(または苦痛の軽減)をもたらす行動が優先されやすくなります。
これにより、理性で「やめよう」と考えても、衝動が勝ってしまう場面が増えます。
さらに厄介なのは、依存症が進むと「気持ちよくなるため」よりも、 “使わないとつらい状態(離脱症状)を避けるため”に使用が続いていく点です。

主な症状
  • <身体面>
  • 不眠、食欲不振、動悸、発汗、震え
  • 判断力の低下、集中力の低下
  • 記憶力の低下、意欲の低下
  • <精神面>
  • 不安、焦り、抑うつ、怒りっぽさ
  • 罪悪感と自己否定の悪循環
テーブルに肘をつき、気力を失ったようにぼんやりと遠くを見つめる女性
アルコールの離脱症状
(危険なサイン)
  • 飲酒を急にやめた時に
  • 手の震え、発汗、不安、不眠
  • 幻覚(虫が見える等)、強い混乱
  • けいれん、意識障害
  • などが起きることがあります。

特に重い離脱は命に関わることもあり、自己判断での断酒は危険は場合があります。
医療機関で安全に離脱を管理することが重要です。

頭を両手で抱え、苦しそうにうずくまっている人
合併しやすい病気・状態
  • うつ病、不安障害、PTSD
  • 双極性障害、統合失調症など精神疾患の併存
  • 肝硬変、膵臓、胃腸障害、糖尿病、高血圧
  • 低栄養、転倒骨折、睡眠障害
  • 自殺念慮(「もう終わらせたい」という気持ち)

依存は単独ではなくほかの病気や生活問題とセットになっていることが多い疾患です。
だからこそ、生活に近い訪問看護が力を発揮しやすい領域でもあります。

患者さんの肩に手を置くお医者さん

4.生活に起こる困りごと(本人・家族・社会の問題が絡み合う)

依存症で一番つらいのは、「やめられないこと」だけではありません。
依存が続くことで、生活のあらゆる場所に“ほころび”が出て、本人も家族も疲弊していきます。

顔を両手で覆い、泣きくずれている女性

本人が抱えやすい困りごと

  • ●仕事や通学の継続が難しくなる(遅刻・欠勤・ミス)
  • ●お金の管理が崩れる(借金、未払い、浪費)
  • ●自己否定が強くなる(「自分はダメだ」)
  • ●周囲に相談できず孤立する(隠すほど孤独が深まる)
  • ●通院や服薬が途切れる(診察に行けない・薬を乱用する)
  • ●体調が悪くても医療にかかれない(放置しやすい)
テーブルに頭を伏せてうつむく人の肩に、そっと手を置いて寄り添う人

家族や周囲が抱えやすい悩み

  • ●何を信じていいかわからない(嘘・隠し事が増える)
  • ●怒りと罪悪感が交互に出る(責めたくないのに責めてしまう)
  • ●家族が「監視役」になり疲れ切る
  • ●お金のトラブル、DV、警察沙汰などの不安
  • ●「世間に知られたくない」と抱え込み、支援が遅れる
  • ●家族自身が不眠・抑うつになる(共倒れのリスク)

依存症は、本人だけの問題ではなく、
家族関係も巻き込みながら長期化しやすい病気です。

大事なのは「家族が頑張って止める」ことではなく、家族も支援される側になること。家族が倒れず、冷静に支援につながる体制を作ることが回復の近道です。

5.治療と回復の現実(治療法・薬・支援資源・再発の捉え方)

依存症の治療は、単に「飲まない・使わない」を目標にするだけでは続きません。
回復は階段のように、安定→揺れ→立て直しを繰り返しながら進むことが多いです。
再発を「失敗」と捉えすぎると、本人が諦めやすくなります。
大切なのは、再発したときに“どう戻るか”をあらかじめ準備しておくことです。

主な治療の柱
  • 医療機関での診察・必要に応じた入院(離脱管理など)
  • 薬物療法(衝動や再飲酒を抑える薬、合併症の治療)
  • 心理社会的治療(認知行動療法、動機づけ面接など)
  • 自助グループ(AA、NAなど)やリカバリー支援
  • 福祉支援(障害福祉サービス、就労支援、生活保護等)
  • 家族支援(家族会、相談機関)
アルコール依存症で使われる代表的な薬(有名なもの)
抗酒剤
(ジスルフィラム)
飲酒すると強い不快症状が出るため抑止力になる(適応や注意点がある)
アカンプロサート
断酒を維持しやすくする目的で使われることがある
ナルメフェン
飲酒量を減らす治療(減酒)として使われる場合がある

※薬の適応は状態や合併症で変わります。
自己判断での中断・併用は危険なので、
医師の管理が重要です。

薬物依存での治療の考え方

薬物依存は物質によって対応が異なり、まずは安全確保と医療につなぐことが最優先です。
離脱症状や精神症状が強い場合は入院治療が必要になることもあります。
違法薬物の場合でも、治療の入り口は必ずあります。

6.訪問看護ができる支援と在宅で暮らす意義(回復を続ける仕組みづくり)

依存症の治療は、単に「飲まない・使わない」を目標にするだけでは続きません。
回復は階段のように、安定→揺れ→立て直しを繰り返しながら進むことが多いです。
再発を「失敗」と捉えすぎると、本人が諦めやすくなります。
大切なのは、再発したときに“どう戻るか”をあらかじめ準備しておくことです。

依存症は、「医療機関に行く」だけでは安定しにくい病気です。なぜなら、再発のきっかけは多くが日常生活の中にあるからです。
訪問看護は、生活の現場で一緒に“崩れやすいポイント”を見つけ、回復を続ける仕組みを作っていけます。

訪問看護でできる支援内容
  • 体調チェック

    睡眠・食事・血圧・肝機能悪化のサイン等

  • 服薬管理

    飲み忘れ防止、乱用予防、主治医と連携

  • 再発の予兆の整理

    どんな時に飲みたくなるかを一緒に言語化

  • 生活リズムの立て直し

    起床・食事・通院・家事の計画

  • 危険場面への備え

    飲酒・使用の引き金回避、財布管理の工夫

  • 家族への支援

    関わり方、声かけ、境界線の作り方

  • 支援資源の調整

    デイケア、自助グループ、相談支援、福祉サービス

  • 緊急時の相談導線づくり

    再発・希死念慮・暴力リスクへの対応

在宅で訪問看護を受ける意義
  • 「通えない・続かない」を補える(支援が途切れにくい)
  • 生活の中の課題が見えやすく、改善策が具体的になる
  • 家族も一緒に支援を受けられ、共倒れを防げる
  • 再発しても“戻り道”があることで回復が継続しやすい
  • 「孤立」を減らし、回復を支える人間関係を作り直せる

依存症の回復で本当に必要なのは、
完璧な断酒・断薬よりも、相談できる相手がいること、生活が再建されること、そして本人が自分をあきらめないことです。
訪問看護は、その土台を日常の中で支えます。

7.まとめ

依存症(アルコール・薬物など)は、意志の弱さではなく、脳と生活と関係性が絡み合って起きる病気です。
本人の苦しさはもちろん、家族や周囲も大きな負担を抱えます。だからこそ、責めるのではなく、治療と支援につながり、回復を続ける仕組みを作ることが大切です。
訪問看護は、体調管理や服薬支援にとどまらず、再発の予兆に早く気づき、生活を整え、家族も含めて支えることで、在宅での安定した暮らしを後押しできます。
「やめるか、やめないか」だけで考えず、“立て直しながら回復していく”道を、訪問看護と一緒に作っていきましょう。

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